膝関節鏡手術

半月板とは

半月板は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間に存在します。

 

  内側半月板 外側半月板
形状 大文字のC状 小文字のO状
大きさ 大きい 小さい
可動性 小さい 大きい

 

半月板の役割

①衝撃吸収作用(クッションの役割):膝関節にかかる体重を吸収・分散します。
②潤滑をよくする:膝関節の屈伸をスムーズにします。
③膝関節の安定化:膝関節接触面の安定性を向上します。

半月板損傷の症状

・膝関節を曲げ伸ばしする時にひっかかりを感じる。
・階段昇降やしゃがみこみ動作の時に痛みを感じる。
・痛みにより、正座が困難。
・膝関節に水が貯まる。

半月板には自己治癒能力がほとんど無く、自然に再生することはほぼありません。

関節鏡手術について

手術の方法は、膝のお皿の傍に1㎝以下の傷口を2つ開け、カメラと手術道具を膝関節内部に挿入します。カメラの映像を見ながら傷ついている半月板の部位を切除、および縫合を行います。
また大腿骨(太ももの骨)、脛骨(脛の骨)の表面にある軟骨に傷がついた場合は、傷ついた部位を滑らかにするのみで、軟骨の痛みを完全に取り除くことはできません。
手術時間は、約15~20分ほど(損傷状況により変わります)で、麻酔時間も含めると約1時間程度で終了します。
※ 関節鏡手術は、日帰り手術と1泊入院があります。

正 常 半月板損傷 半月板損傷+重度軟骨損傷

部分切除後 縫合後

 

手術前のリハビリについて

当院では、患者さんに応じて手術前から筋力訓練や食事指導を行っております。

  • 筋力訓練
    手術後、筋力は低下しやすいと言われている為、手術前からしっかりと筋力訓練を行う事が大切になります。

  • 食事指導
    体重が重い方には、膝への負担が多いため手術前から食事指導を行い、体重管理を行っていきます。

 

退院後のリハビリテーション

手術が終わったら、そこで治療が終わりということではなく、今後のリハビリが大切になります。

  • 1. 関節可動域訓練
    術後早期に膝の曲げ伸ばしを行い、膝の動く範囲を拡大していきます。 患者さん自ら、しっかり曲げ伸ばしを行う事が大切です。

  • 2. 筋力増強訓練
    半月板を切除した事により、半月板がもつ本来の機能が半減しています。 また、手術により膝周囲の筋力自体も低下してしまいます。 その為、膝周囲の筋肉を強くする事により膝の安定性を高めると共に、膝の状態の悪化を防ぐ必要性があります。

     

  • 3. 歩行訓練
    筋力低下や痛みなどによる歩行バランスの乱れを、 個々の状態に合わせた訓練により、正常な歩行に近づけていきます。

  • 4. 自転車エルゴメーター
    サドルに座って運動をする事で、膝への負担を減らした状態で運動が可能です。ペダルをこぐ事で膝の屈伸をスムーズにし、筋肉がバランス良く働くように運動をします。 また、有酸素運動によりダイエットにも効果的な運動です。

  • 5. プール
    プールでのトレーニングは水の浮力により膝の負担を減らした状態で全身運動が行えるため膝の手術を行った方に対して、大変有効なトレーニングです。また、有酸素運動によりダイエットに 効果的な運動です。

  • 6. 反重力トレッドミル(ALTER-G)
    空気圧の調節により、最大で体重の20%まで下肢にかかる負担を軽減することが可能です。 生活の質の向上と日常生活動作の維持、怪我からの早期回復、運動パフォーマンスの向上などを目的とします。

手術後の日常生活における注意点

入浴について

  • 手術後4日目から、手術部位にラップを巻いてシャワーが可能です。
    ※手術1週間後に抜糸を行います。

  • 抜糸翌日から、シャワー・プールが可能です。

  • 抜糸後4日目から、入浴が可能です。

正座や横座

膝を深く曲げる上に体重がかかり膝の負担となるので控えて下さい。

運動

切除した半月板が膝に馴染むまでに、2~3ヶ月はかかるので激しい運動は、控えてください。

体重

体重が1kg増えると、膝には約3倍(3kg)の負担がかかると言われています。体重が重い方は( BMI 25 %以上)、膝への負担が多いため、健康運動指導士がダイエットプログラムを作成し、患者さんの体重を調整していきます。

アイシング

患部に腫れや熱感、痛みなどが出現した時には、痛い部位を冷やして下さい。冷やし方は、アイスパックやビニール袋に氷を入れタオルに包んで行って下さい。20~30分間を目安にして下さい。

仕事

重い物を持つことは体重が増える事と同様で、1㎏の物を持つと膝に3㎏の負担がかかります。

ウォーキング

  • 心肺機能を高め、ダイエットに効果的な運動です。

  • クッション性の良いスポーツシューズを履いてください。

  • 歩くだけでは、筋力はつきにくいので、あくまで全身運動として捉えておいて下さい。

  • 膝に痛みや違和感を感じた時は、無理をせず休み、運動を中止して下さい。

 

Q&A

Q.歩くだけで膝まわりの筋力はつきますか?

A.くだけでは筋力はつきません。しかし、歩く事は心肺機能向上やダイエットには効果的です。

Q.サポーターをつけてもいいですか?

A.基本的にサポーターは着用しないで下さい。サポーターをつける事で、自分の筋力を使わなくなり筋力が弱くなります。

Q.正座をしてもいいですか?

A.膝が正座できるほど曲がったとしても極力さけてください。非常に膝にとって負担が大きいです。

Q.軟骨に傷がある場合、痛みはなくなりますか?いつになったらよくなりますか?

A.軟骨は再生するものではなく、傷があった場合は完全によくなることはありません。しかし、運動により筋力をつけ、体重を減らす事で、膝への負担は軽くなりますので、痛みを軽減する事は出来ます。