高位脛骨骨切り術

高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy : HTO)とは 

 膝関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、お皿の骨(膝蓋骨)によって構成されています。膝関節がスムーズな動きを保つために骨の表面には軟骨があります。しかし、年齢とともに除除に軟骨がすり減り、膝が変形する事で、痛みを生じたり水がたまったりします。これを変形性膝関節症といいます。
 高位脛骨骨切り術では、すねの骨(脛骨)を切り、傾斜を変化させ、太ももの骨とすねの骨の軸を変える事で、膝関節の傷んでいる部分への負担の軽減を目指します。

高位脛骨骨切り術の対象は…
 絶対条件として、膝関節の外側が壊れていない方が適応です。その他の条件としては、重労働の方、仕事で立ちしゃがみの多い方、人工関節を受けるには年齢が若い方となります。

利点は…
 手術創が小さい、関節が温存される、手術後の日常生活制限が比較的少なく、スポーツも可能、正座が可能となる例が多い。

欠点は…
 完全な除痛ができない事、骨のつき(骨癒合)に時間がかかる事、美容上の問題がある。

正常な膝関節(20代女性)

正面像 側面像


変形性膝関節症(50代女性))

正面像 側面像

高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy : HTO)

  • 手術前の検査
    身体の状態や血液検査を行います。また、リハビリにおいて、痛みの程度や膝の曲がり、筋力を測定します。

  • 手術内容
    まず、関節鏡にて膝関節内の処置を行います。膝関節内の壊れた半月板や軟骨の処置を行い、更に炎症を起こして肥厚した関節の膜(滑膜)をきれいにします。
    次に骨の矯正を行います。脛骨(すねの骨)内側部を約6cmほど切開します。すねの骨(脛骨)に切り込みを入れ、曲がった骨を少しずつ矯正していきます。曲がった骨を目的の角度まで矯正したら、特殊な金属のプレートとスクリューで固定します。矯正により開いた骨の隙間には人工骨を埋め込みます。埋め込んだ人工骨は約1年で吸収され、すべて自分の骨に置き換わります。最後にレントゲンにて骨の状態を確認し、皮膚を縫合して終了となります。手術時間は1時間半から2時間です。

    手術前 手術後 抜釘後
  • 手術後
    当クリニックでは手術前日、もしくは2日前から入院していただきます。
    術後当日より坐位・立位トレーニングを行い、翌日からは関節可動域トレーニング、筋力トレーニングを開始し、両松葉杖による歩行を行います。歩行は、部分荷重(松葉杖)から全荷重へ移行し、2~3週で一本杖となり、退院となります。

 

退院してから

  • 1. 日常生活について
    基本的に日常生活に制限はありません。階段昇降や歩行も特に問題はありません。しかし、長く歩くことで痛みがでたり、腫れたりすることがありますので、その時は膝を冷やしてください。

  • 2. 退院後のリハビリテーションについて
    退院後も入院時同様に筋力強化を目的としたトレーニングを継続して実施する事が大切です。膝の状態によりトレーニング内容が異なりますので、主治医や理学療法士に確認してください。

  • 3. 定期受診について
    退院後は定期的な診察を受けていただきます。また、膝に何らかの異常を感じたら早めに受診してください。

  • 4. 定期受診について
    膝への負担が少ない仕事であれば退院後からでも可能です。

  • 5. 定期受診について
    手術後一年経過した時点で、使用した金属を抜く事をお勧めします。使用する金属は人体には無害と言われていますが、一年後には骨が完全にでき、それまで骨を支えていた金属は必要なくなります。また、関節鏡にて半月板・軟骨の状態を確認し、損傷があれば処置を行います。手術は日帰りでも可能ですが、状態により入院になる場合もあります。